2011年5月25日水曜日

画像処理の理論とその考古学における可能性 (前編)

こんばんは。YOKOYAMAです。

ちょうど10年前、2001年5月に当時の若き情報工学研究者Chiba氏(現ビジネスパートナー)に、初めて画像処理の考え方の基本を教えてもらいました。

画像処理は、3次元と2次元との間を往来する思考には欠かせない方法です。しかしそんな一聞して高等と思える手法も、その基本は紙 / 定規 / 鉛筆 / 電卓というたったの4種の道具で出来るほど単純な理論に基づいています。

今回は、この画像処理について解説的にまとめます。


たしかに私自身、画像処理の概要を理解したことで、その後の仕事でプラスに作用した場面は多々ありましたが、この記事の目的は、読んだ方に画像処理を薦めることではありません。それよりはむしろ「画像処理の理論に、考古学へのヒントが隠れている」という私の考えを説明することが目的です。

実際に書いたところ長くなってしまったため、前後半2回に分割しました。

それでは「前編」です。



画像処理の準備

さて、地形情報処理の場合は、「数値標高地図」をもとに画像処理を行います。例えば50m数値標高地図とは「地上を一辺50メートルの正方形メッシュで仕切り、その正方形ひとつひとつにその場所の標高値が格納されたデータ」ということになります。地図ですから、この場合、天頂から垂直に見下ろし「水平面」に投影させた画像を基本に解析をおこなうわけです。

ところが、遺物の3次元データの場合は、3Dデータ自体に「水平」という概念を含みません。そこで画像処理をはじめる前に、まずはデータの「投影面」を決め、この投影面を「水平」と仮定した場合の「数値標高地図」に相当するデータを準備する作業が必要となります。


(1)3次元点群を入力する
3次元計測器で3D点群を入力します。3D点群は、三次元空間上の点の集合で、それぞれの点がX,Y,Zの座標値を持っています。3次元グラフとして出力すると、以下のような赤い点の羅列になります。



(2)ポリゴンデータを生成する
3D点群は物体の表面の点ですから、それぞれ無関係に存在するのではなく、点の間には「面」が存在します。そこで各点の隙間に擬似的な面を張る必要があります。「面」は、各点間を結ぶ直線で囲われた多角形として生成されます。 この面をポリゴンと言います。物体表面に無数の細かい面が形成された状態のデータをポリゴンデータといいます。



(3)視点と投影面を設定する
ポリゴンデータに対する視線のベクトルを決定することで、視線のベクトルに直行する投影面が決まります。これは実測図で言えば、方眼紙上で土器の姿勢(表裏、天地、傾き)を決める動作に相当します。



(4)DEMを作成する
投影面を正方格子状に仕切ります。この1マスが「画素」になります。
次に各画素の中心からポリゴンまでの距離を求め、その距離の値をそれぞれのマスに格納します。このデータをDEM(ディジタル標高データ:Digital Elevation Model)と言います。
こうして投影面を「水平」と仮定した場合の標高データを作成するわけです。



(5)完成したDEM
これが0.2mmメッシュのDEMです。標高値(投影面とポリゴンデータとの距離)が大きいところほど白く、小さいくなるほど黒く色付けをした状態で、これを「濃淡画像」と言います。ここでようやく「数値標高地図」と同じような体裁になり、いざ画像処理への準備完了です。



それでは、次回へとつづきます。

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