先日、4月10日から7日間の出張を終えて帰ってきました。今回も多くの人に会うことができ、さらに桜満開&終始快晴というおまけ付きで、素晴らしい旅となりました。そして何より今回の旅には大きな発見があり、新しい可能性も見えてきました。これからいろいろと知恵を絞って形にしていきたいと思います。
さて、今日は「レリーフ」という概念についてまとめます。
「レリーフ」は下図のような陰影による表現手法です。3次元表示のなかで最もポピュラーな手法で、あらゆるviewerの標準的な表示法として利用されています。下図のような表現を誰でも一度は見たことがあると思います。
縄文土器(模造品)のレリーフ画像 |
レリーフ生成の仕組み
3次元点群から生成されるポリゴンデータを基本として、多種多様な表現が生み出されますが(→過去記事参照「考古資料3D化の基本プロセス」)、レリーフもそのポリゴンデータから求められる表現のひとつです。
考古学3D化の基本プロセス |
レリーフ生成の手順は以下のようになります。
1)光の方向を決め、光源からの正投影光「光線のベクトル」を定めます。
2)その一方で、各ポリゴンに直行する「法線ベクトル」を求めます。
3)「光線のベクトル」と「法線ベクトル」との成す角度を求めます。
4)この2つのベクトルの成す角度を色の濃淡に置き換え(例えばグレー階調なら角度が0度で白、180度で黒というように)、それぞれのポリゴンを着色します。
ポリゴンの法線ベクトルと光線のベクトル |
レリーフの特徴
レリーフの特徴を以下に列挙します。
1)色情報について
色情報(texture)に影響されずに純粋な形情報を可視化できることがレリーフの長所です。しかしこれは諸刃の剣で、彩色のある対象や付着物がある対象など、本来の色を観察したい場面では、逆にこれが短所となってしまいます。
2)光の方向について
取得したデータに対し光源位置を任意に指定できる点が長所となります。しかし単一の角度からでは、ちょうど「月」のように光源の逆方向が暗くなってしまいます。つまり単独で対象表面全体の凹凸起伏を表現するには不向きだと言えます。
3)影について
隈無く形情報を表現できるという長所があります。自然界で下図のような光線を仮定すると、aの部分には影が出来ます。しかしレリーフはあくまでも光線のベクトルと法線ベクトルの差の演算によって求められる値ですから、aの部分が別の高まりの影になってしまうことはありません。これはレリーフのメリットと言えるでしょう。
shadow |
さて、長短いろいろと書きましたが結論を一行で言えば、「レリーフは対象物の概形を直感的に示すことのできる表現技法だ」ということです。必ずしもレリーフ単独で多くの情報を網羅するものではなく、3次元データから生成される多様な表現のひとつとして重要な意味をもちます。例えば、別の解析画像の背景に薄く乗算することで高い視覚的効果を生むケースもあります(これは期を改めて説明します)。
考古資料の3次元化においてレリーフの存在は、「助演男優」や「名脇役」といったシブい役どころかもしれません。
余談〜「斜度図」と「レリーフ」の関係
ところで、地形情報処理には「斜度」という概念があります。考古学の遺跡分布図では、水系地図や標高地図が用いられるのが一般的ですが、これを「斜度図」に置き換えることで、より有効な情報が得られる場合があります。
例えば、狩猟採集から水稲農耕へという生業の転換ともなう遺跡立地の変化は、一見「高い場所→低い場所」への変化と理解されがちですが、実際は「傾斜地→平坦地」への変化として現れます。斜度図は土地の傾き度合いを特徴量とした解析図ですから、標高値という属性からは捉えにくい遺跡立地の特徴を的確に定量化することが出来るのです。
下図は東北地方中央部の標高図です。左側の南北に長い北上盆地があり、右側中央に遠野盆地があります。標高図からは北上盆地と遠野盆地の標高の違いを読み取ることができます。
標高図 : 北上盆地と遠野盆地 [数値地図50mメッシュ(標高)を利用] |
斜度図 : 北上盆地と遠野盆地 [数値地図50mメッシュ(標高)を利用] |
実は、この「斜度図」も「レリーフ」の一種なのです。すなわち斜度図は、光線のベクトルを真上から真下、垂直方向に指定し、それと地表面の法線ベクトルとの成す角度によって濃淡をつけた「レリーフ画像」ということになります。
以前、この両者をそれぞれ別モノとして脳内格納していた私が、この関係に気がつかされた時は「あ”ーっ」と変に感動してしまいました。
それでは。
おお!こんなweblogができているとは!勉強させていただきます。
返信削除あかねだ様
返信削除こんばんは。コメント頂きありがとうございます。
まだまだ勉強中の身ですから、こちらこそいろいろと教えて頂きたいと思います。
よろしくお願いいたします。