2012年になってもう1ヶ月も経ってしまいましたが・・あけましておめでとうございます! これからもいつもの調子でこのブログに自分の考えを書いていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
さて、少し前のお話になりますが、昨年9月東京にて日本情報考古学会「考古学研究における3D技術の応用と課題」というシンポジウムが開催されました。
そのディスカッションのなかで、考古学が3D化を目指す上でいつか必ずボトルネックになるだろう常々考えていたポイントを、ある質問者がズバリ指摘していました。その指摘を要約すると「3次元の有効性は理解できるが、それは報告書という書籍になる過程で全て失われてしまい結局ユーザーに届かないじゃないか」というものでした。
たしかに3次元データは「紙」という媒体ととても相性が悪く、まさにそのとおりだと思いました。それでもなお3次元化の主張を通すならば、いずれビューアやデータベースなど考古情報を共有する仕組みは自分たちで設計、構築する必要があり、それなりの時間と大きな投資が必要だろうと考えていました。
ただし「去年までは・・」です。
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ところで、つい先日、Apple社から iBooks Author という無料ソフトがリリースされました。これは電子書籍を作成するソフトですが、なんと図版、写真はもちろん、ムービーや3Dコンテンツなどをいくらでも挿入することができる優れもので、作成した書籍はオンラインストアにアップすることで、わずかな費用で全世界にむけて開架、配信できる・・そんな素晴らしい仕組みのなかで運用ができるようなのです。
iBooks Author リリースを知ったとき、私は真っ先に「これは遺跡情報のアーカイブのために作られたソフトではないのか?」と思ってしまいました。まさに渡りに舟! つまり遺跡に特化した情報共有モデルをわざわざ自分たちで考案しなくとも、このソフトを活用する、そして既に音楽やアプリの配信で鍛えられたこのビジネスモデルに乗っかればいい・・ということなのかもしれないのです。
とはいえ、実際に詳細を確認する必要がありますので、これについてはじっくりと遊んでから改めてレビューを書きたいと思います。
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さて、これによって枠組はできた(と仮定します)。これを受けて僕らが早速何を準備するか? と聞かれれば、「コンテンツ」を確定させることだと思っています。つまり「モノの考古学的観察をおこなうためデータセット」を決めることです。
過去に何度かこのブログで紹介してきた PEAKIT などは、その素材のひとつという位置づけになります。ただし必ずしも「資料」と「静止画」が1対1の関係になるわけではなく、PEAKITから判読された結果をクロスチェックするための別の素材・・例えば、テクスチャー、等高線、あるいはインタアクティブに光源やモノを動かして観察できるようなデータなども必要になるかもしれません。ほかにも対象の特性に応じた多様な切り口があるでしょう。
今年は、石器のスタンダードはコレ、土器のスタンダードはコレ、石垣スタンダードはコレとコレ!・・という風に、それぞれの遺物の特性に応じた「標準データセット」を確定させ、それを噂の iBooks Author に乗せて、皆さんに提案できるところまで到達したいと思っています。
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いままでは破壊されてしまう遺跡を、緊急措置として泣く泣く「文献」化することで対処してきましたが、ひとつのソフトの出現によって、3Dデータとして「形」そのものを情報共有することができるようになるんです。
これは、モノを対象とする考古学・・その「アイデンティティの復興」とでも言い換えられないでしょうか?
こんなことをビールを飲みながら考えていると楽しいですね。
あらためて、本年もよろしくお願いいたします。
それでは。
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